「この――っ」
電光石火のごとく現れた第三者の影が、男に重なり。
「阿呆んだらがあぁぁぁっ!」
誰かと理解する前に、男の体にフルスイングが決められた。
フルスイングとは長柄なりの鈍器が必要なわけだが、唐突として現れた第三者――五十鈴さんの手には大きな鋏が握られていた。
丸まった二つの指環から、刃先までが同じ素材らしい黒銅の大きい割りに細い洋裁鋏だ。
鋏とは断ち切るためにあっても、支点力点作用点を使わない二枚刃を閉じた状態ならばただの鈍器。
切れない背で脇腹にフルスイングを決められた男は、派手に吹っ飛ばされた。
僕に負けず劣らずでも、ぽっくり下駄なんてバランス悪い履き物のせいで足首がぐきりっと曲がっていたから余計に痛そうに思える。


