心なしか、舌が“引っ張られている”ような気さえもしてきた。
全ての常識、非常識さえも自分の言葉一つでがらりと模様替えしてしまうような――強みある言葉。
汗なんかかいてなかったのに、今や、着ていたシャツが肌に張り付くほど冷たい液体が吹き出してきた。
本物の異質。
化け物にしか見えなくなってきた男に対して。
「知って、います……」
僕は屈伏するしかなかった。
本当のことを話したなりに舌先の違和感が消えた。対して、男はどこかつまらなそうに笑みをなくしている。
「命拾いしたな、ガキ。ま、数分間伸びただけだけどなーっ」
しなるように笑った唇の前で、扇が開かれた。
ばんっと勢い良く、十三夜ほどに開いた扇は黒く、血飛沫みたいな――赤い彼岸花が咲いていた。


