よく分からないことを口にする男は、僕の話を聞くつもりがないらしい。僕が口を開こうとすれば、先にあちらが声を出す。
「ガキ、ここに住んでる男ってお前だけか」
目が隠されているのに、見定めるような気がした。とんとん、と扇で口元を叩きながら、吟味もしているように思える。
「は、い……」
完璧に怖じ気づいた状態となった僕が正直に答えれば、ふーんと返された。
「お前だけ、ねぇ。ならよぅ、ここに来る女――脱がせやすい奇抜な服した、背の高い、乳なしでも犯してえような女、お前知ってる?」
「……」
奇抜な服と背が高いで五十鈴さんを思い出した。
思い出したならば知っていると言うべきだけど、男の正体が不明な以上、誰かの情報を流すべきでないと思った。


