後半からはなんて馬鹿馬鹿しいんだと、それを諭す自分さえも惨めに思えて、貞夫は目頭が熱くなるのを感じた。
そんな夫の横で、明子は睨み付けるように両親を見た。
「私も小さい頃から聞かされていたけど、それは迷信でしょう?開けちゃいけない箱があるだなんて分かっていたけど、開けたぐらいでなに?渉を捨てるほどのことになるの?」
捨てる、とそんな人聞きの悪いことをと明子の母親は言ったが、正にそうでしょうっと明子は声を高くあげた。
「捨てるじゃないっ、お父さんたちが言っていることはそうなのよ!籍を抜くって勘当ってことでしょ、渉がそこまでのことしたかしら!
確かに土蔵に入ったのはいけないことだと教えたけど、私たちにだって責任があるわ!鍵の管理とか、渉の面倒とか……!あの日、お父さんたちが呑気に出かけず、渉の面倒さえ見てくれていれば!」
こんなことにはならなかった、との続きは、明子の母親が制した。


