僕は伯母さんに世間話はおろか、下手をすれば連日に渡って会話しないこともある。


言葉を出した瞬間に、伯母さんの怒りに繋がるんじゃないかと、この頃はびくびくしていたものだ。


伯母さんの怒り――“浄め儀”のポイントが分からない。何もしなくても水をかけられるときもあれば、おはようございますの挨拶をしただけで『邪念がっ』と朝から“浄め儀”もされたので、僕はなるべく伯母さんとの接点をなくそうとしていた。


もっとも、伯母さんは宗教団体に入り浸っているために、夜までいないし、食事に関しても孤食。伯母さんの作り置きか、スーパーの惣菜を自分で冷蔵庫から出して好きなときに食べていた。


唯一ある接点がそれこそ“浄め儀”しかないという状態で、僕が自らの不調を訴える――伯母さんと会話するだなんてことはできなかった。