皆がランドセルを机に置く帰りの会では、かなりそわそわしていたと思う。


早く帰りたい――ではなくて、早く五十鈴さんに会いたいと先走りしていた。


今日、五十鈴さんに会えるかなんて分かったものじゃないけど、分からないからこそ『今日はいるかな』と期待が大きくなり、落ち着かない気持ちが続く。


帰りの会の締めくくりたる、さようならの合図と共に僕はランドセルを背負ったわけだけど。


「ちょっと、渉くん。顔が赤いけど、大丈夫?」


先生に止められてしまった。


顔が赤い、とは僕の不調が顔色まで出てきたことなんだろう。


今日は朝から調子が悪かった。けれど、学校休みたいと僕が伯母さんに言えるわけもないし、伯母さんは僕の顔など意識の外に置いている。