あれ以来、五十鈴さんと初めて話したとき以降、彼女はよく僕の様子を見に来てくれた。


よく、とは言っても、週二程度しか顔を見せてはくれないし、話せる時間も10分にも満たない。けれど、僕はそれでも満足だった。


欲を言えば、もっと一緒にいたいと言いたいけど、五十鈴さんは今別れてもまた来てくれるという確信があったからこそ、我慢ができて。


彼女の話が面白いし、僕の話にきちんと耳を傾けてくれることも嬉しかった。


やっと会えた友人とも言うべきか、歳は離れすぎているけど、五十鈴さんは大人と子供の分別ではなく、僕自身を尊重してくれたから対等な仲でいてくれた。


家にも学校にも『居心地が悪い』と思えた僕の、唯一の拠り所が五十鈴さんの隣になりつつあって、彼女と会える時間――学校から帰る道中にある山間の道を歩くのが一番の楽しみになっていた。