「……!」
そこで五十鈴は、目を逸らして、“黒”への理解を免れた。
本能的、反射的な防衛だった。
根拠なき悟りでしかないが、五十鈴はとっさに“アレを理解してはいけない”と考えるのを止めたのだ。
意識をせずに見ても、禍々しさは残るが、葉一枚と見なければ木であると認識できるように、五十鈴は苦なく少年として見ることができた。
随分と小柄な少年だ。ランドセルから小学校に上がっているにせよ、発育が悪い気がする。
そうしてその顔。
見覚えにしてはありすぎる顔に、五十鈴は真っ先に『渉だ』と判別できた。
二十歳に死ぬ人間。
寿命が決まってしまった少年。
その訳も、アレ経由かと判断できるほどに、渉がまとうモノは異常の塊であった。
幼い身の上でありながら、いったいどうしてあんなモノを宿してしまったのか。あんなモノに殺されるだなんて、あまりにも不憫で。
何か、少年にしてあげられないだろうか――