そんなことを繰り返している内に月日は流れていく。少年の項目が変わらぬまま一年目、ついに五十鈴は我慢ができなくなった。
例外的たる少年への興味と、覆ることなき寿命により湧いてきた悲哀。それでも五十鈴は堪えてみせてもいたのに、堰のヒビが入ったのは、一つの偶然から。
道端でばったり会ってしまったと相違ない、ただの偶然。
飛び回る五十鈴の左目が見た“ある異形”に、五十鈴は思わず、立ち止まって見てしまった。
山間の廃れた道路を歩く、黒いランドセルを背負った少年。時間的に家に帰る最中であるのは分かったが、その少年の後ろにいるモノがいけなかった。
暗闇を見て、不安と恐怖をかき立てられる気持ちに近い。まだ大きさは小さいが、少年の首元には良からぬ黒が……いいや、アレは、もっと、きちんとした。


