中指斬残、捌断ち儀



救われた者はいいかもしれないが、救われない者たち(あるいはその家族)にしてみれば、『なぜそっちは救って、こっちは救わなかった』と涙と怒りを吐露するに決まっている。


叱責者も、五十鈴の優しさが分からないわけではない心を持っていたからこそ、厳罰なしの自己改善に止めてみせたが――己で改善できないからこそ、五十鈴は余計に苦悩した。


助けての声を見過ごす努力をしなかったわけではない、結果的には『黙って見ているだけ』という状況をほとんどの場面で保てていたのだが――それでも、五十鈴はついその手を差し伸ばしてしまう時はあった。


根っからのお人好しは抜けない。死神なんか向いていないと思っても、自身の生きる意味(役割)とはこれしかないし、五十鈴の後がまが見つからない以上、自分勝手に逃げるわけにもいかなかった。