“生きている者を救った五十鈴”は人として賛美されるべき存在でも、死神としては叱責ものだ。
畑違いもいいところで、人の死に目に出会う度に救うならば、それは死神全員が“全てを救わなければならなくなる”。でなければ、あまりにも不公平であり、『お前だって全てを救えないだろう!』と独りよがりの平等ではない救いに『改めろ』とお叱りを受けた。
間違ってなんかいない、もっともだ。
五十鈴のした自分勝手な性格の行いは、職務怠慢どころか職務放棄。付け加えれば、死神全体の沽券を下げるような行いだ。
一人を救うならば、全てを救え。でなければ、救われなかった者が不憫すぎる。
命という大きな責だからこそ、とりわけデリケートな問題なのだ。


