五十鈴の難点とは、その性格であった。
厳密に言えば、性質か。五十鈴は人一倍、誰よりも、“お人好し”だったのだ。
お人好しの世話焼き。単なる優しさが行き過ぎたその性格は、本来、見向きもしてはいけない“生きている人間”にも向けられてしまう。
死に間際に出会ったならば尚更だ。本来、“死んだ者しか救えない”つまりは“死んだ後にしか手を出してはいけない”役割を持つ五十鈴なのだが、どうあっても絶命しかかっている命を見過ごせなかった。
大概は、五十鈴が行った時には絶命しているため、その際は規定通りの魂伐採に勤しむが――「助けて」とまだ言える人間を見てしまえば、心の底から『そうしたい』と思ってしまう。
絶命必須な命を救う手は持っていない五十鈴にできることなど限られているが、やれる範囲でその者の救助をしてしまい、事実、五十鈴のおかげで生き延びた者は何人かいた。
