生命が死んだ後に、放置をすれば肉体も朽ちてしまうが、霊魂というものは肉体が朽ちるまで取り残されてしまう。


培ってきた人生で産まれた感情や記憶、いわゆる“心”の役割を果たす魂は、肉体に閉じ込められた状態で人の中にあり続ける。


人生を得るための要素としては正しいあり方だ。好き勝手に肉体から出られては困ることでしかないので、絶対に逃がさぬように密閉した身体に置くことは至って普通だが――それはあくまでも、人生を歩んでいる間での利点だ。


蓋を閉めたどころか、蓋(出口)そのものがない肉体(容器)の中にある魂は外には出られない。


生命がなく、死んだ状態たる人の魂が肉体に残ったところで何の不便があるのかと死んだことがない者にとっては想像の範囲外であることでも、その“閉じ込められている状態”というのは、自由を好む人間――いいや、生き物全般にとっては辛いだろうと判断した者がいた。