苦悩の中でも、生き甲斐を見つけていた彼女に、泥を塗るような真似をしたくなかった。


優しさは伝染する。


僕を笑顔にしてくれた彼女に対して、僕もまた彼女に向けた気持ちを持っていた。


世話焼き、お節介。それらを疎ましいと思いながらも捨てきれない彼女を、僕は『そうだからこそ、僕は嬉しい』と肯定していた。


事実としてそうだし、僕が笑えば彼女も自身の性格に価値を見出だすのだから、なかなかにいい関係性を築けていたと思う。――もっとも、彼女は価値を見出ださずとも、僕を見捨てないだろうけど。


どちらとも、かけがえのない存在。


その友人関係は何年経っても薄れないし、逆に濃くなっているようでもあり。


今の僕が、普通に生活できるようになったのは彼女のおかげだ。