この時、彼女に会っていなければと思うと、ゾッとする。
もしも、だなんて考えたくもないが、二十歳まで死ねない僕は、ずっとこの苦痛を一人で抱えているだろう。
出会った時期もちょうど良かった。ある程度、成長をすれば、性格というものが固定化されて定着をする。ついで、まだ現実に幻想を抱くような夢見がちな時に現れた不思議なことに対しても、信じて受け入れられた。
フクロウにもなれる彼女に僕は驚くどころか、喜んで、その特別さに好奇心をはやし立てられたものだ。そこに『バカな』だなんて、懐疑はない。
彼女は特別であり、そうして僕の恩人だ。
「五十鈴（いすず）だ。お前は？――そうか、渉（わたる）か。かっこいい名前じゃないか」
そうして、五十鈴と名乗る彼女は綺麗な名前だと思った。
