「でも……」


けれども、僕はぐずる子供だ。でもでもだってと、もしかしたら精神がネガティブよりになっている。


そんな僕の頬を、彼女はむにっと摘まんだ。


「阿呆んだら。私がそんなに信用ならないか」


あほんだらって、なんだと思う以前に、会って間もない人に信用云々を説くのは少し無理ある話だ。


けれども、彼女はそんな常識を持ち合わせていない。彼女自身が、人間みんな信用できるという性格なのだから。


自分がそうだから、周りもそうである。だなんて押し付けでしかないけど、彼女の『信用できる故に信頼を持ち、信頼する故に信じてみよう』な精神は、素敵なことだと今でも思う。


彼女の『信じろ』は根拠なき説得力があった。無条件で、彼女に飛びつきたくなるような信頼を持ってしまう。