「どうしたんだ、“アレ”を!いったいお前は“どこにやった”んだ!」
病室の扉が閉められる。
尚も響く怒声は最後に。
「どこに……っ、“食ったんか”、お前はっ!」
そう言い残して、遠ざかった。
祖母も一緒に行き、また一人になった静かな病室で、僕はあの時のことを思いだそうとしていた。
祖父が言った言葉に。
――食ったのか、と。
次の瞬間に僕は吐いた。吐いたと言っても、ドロドロした液体しか出ずに――“アレ”が、出ない。
一週間も何も食べてなかった胃に内容物なんかない、言い換えれば、一週間前に食べたものなどとっくに消化されたはず。
消化され、血肉となって根付き、僕の体の一部となった――“アレ”。


