手紙と同じ言葉が口にされたことで、僕は初めて『悪いこと』をしたと思った。
声だけでなく表情さえも戒めるような雰囲気だ。ふいに、悪いことしたから水をかけられてしまうと僕は思ったが、彼女は僕の手を取った。
少し乾燥気味で傷跡がある手は、彼女が温室育ちではないことを知る。
一人で生きてきたような人の手だ。決して綺麗とは言えないのに、僕はこんな手の方が好きだと思えた。
母親も父親も確か、こんな手をしていたと思うから。
「クッキーを貰い、羽を置いた“私”も悪いが。注意されたのに続けるな。子供のくせに、プレゼントで私の気を引こうなどと。
そんなことを続けていては、お前の周りには損得――お前が物をくれるから傍に“いてあげる”だなんて奴らしか集まらないぞ」


