細部まで思い出せるほど“彼女”のファッションセンスというものは個性的で、僕は今でもそう言える。
後々に、そのファッションについて聞いてみて「動きやすいからだ」と返されたけど、背中の布を腰までぱっくりあけて、その部分にまた交差させた紐を付け加えている物を着ているのでは、明らかに好み混じってますよねと心でぼやいてみせたものだけど。
変な服=おかしな人と思う僕は、その女性に警戒心を抱いてしまった。
立ち上がって歯向かうだなんて勇気はないため、僕はただおずおずとその女性を見るだけだった。
女性の目――左目は固く瞑られ、開いた右目だけが僕を見つめる。
右目からはマスカラでもかけたような長い睫毛が伸びているのに対して、左目には睫毛がなかったのでひどくちぐはぐに思えた。


