理想としては、ここでフクロウがクッキーを取りに来てくれることだけど、野生動物の手懐けが難しいことは、塀の猫で知っている。
押してはダメだと、僕は引くことにした。
「こ、ここっ。ここにおいとくからね!」
掲げたクッキーを地面――大きな葉っぱの上に置く。皿代わりにした葉っぱがしだれ、僕はもう一度、「ここ」とアピールしたあとに、ランドセルと手提げ袋を持って、その場から離れた。
ダッシュだ。
ランドセルも背負わずに、持つものだからかなり危なっかしい走り方だと思う。
それでも転ばずに僕は伯母さんの家についた。
階段を早足でかけ上がったものだから、心臓がはち切れんばかりに鼓動する。


