何を理解したわけでもないが、水からした――濡れた服や帽子からした異臭に、はっとした。
雨に濡れた青草の匂いが一番酷いが、薬品の匂いや酸味ある腐った匂いも。
とてもじゃないが『いい匂い』だなんて言えない。逃げ出したくなるのはいたって普通なのだが、それを見越したように伯母さんは僕の腕を掴んで逃がそうとしなかった。
「逃げてはいけません。逃げたら悪いものが充満します。これはあなたのためです、あなたのために水をかけましょう。あと、十二回。この家に住むからには、綺麗な身でならなくてはなりません。
だから、水をかけましょう。逃げてはいけません、逃げては――だから、逃げるなと言っているだろうっ!」


