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嫌だと言わなかったわけじゃない、この時に一番、僕は泣いてすがったけど。
「仕方がないのよ」
「これが渉のためなんだ」
「何かあったら、すぐに迎えに行くわよ」
「だからいい子で元気でいるんだよ」
いつもみたいに――
そうして僕を突き放した両親の言葉が――、いい子であるという意味が、『親に迷惑をかけない子でいろ』と同じなのに気付いた。
今までいい子だった、僕。
これからもいい子であろう、僕。
親に迷惑をかけないできすぎた子たる、僕。
親の思い通りになる僕は、もう両親にすがることなどできず、きっと二人は心の底から僕を愛し、手離すことを悲しんでくれているんだと信じた。


