きっといつか貞夫とて結婚をし、子供とて出来る。連れ子として渉も愛してくれる妻ならばまだいいが、新しい妻子、渉ともに育てるとあっては、今に仕事をやめるわけにもいかない。
下積み時代と経験があってこそ、昇進に繋がり、それなりの地位と給料を貰える。
それを手離し、育児に専念してしまえば、今まで積み重ねてきた努力と苦労が会社を辞めることと共に無駄になる気がしたのだから尚更だった。
渉を引き取る。
喜美子になど預けられない。
そう、思っていた。意気込んでもいた。しかし、まだ貞夫とて“未来(将来)がある”んだ。
金を送る内は、喜美子とて“金のなる木”とも言えよう渉に滅多なことをしないはずだし、もしも何かあったとすれば。


