よくよく考えれば、喜美子の増額もまだ現実的な話なんだ。
多いと言えばそうだが、それはまだ『何とか出せる額』の範疇に含まれている。
勘当された家族から呪われた子を押し付けられた喜美子が、こちらが提示した『まだ余裕ある額』で納得するわけもない。
くわえて、出すのは貞夫のみ。まだ出していない両親、妹から搾り取れるとは少し考えただけで分かるだろう。
――ふと、そこまで思い、貞夫はあることに気付いた。
もしかしたら、喜美子は勘当した両親に復讐したいのかもしれない。
嫌っている絶縁した娘にお金を払うだなんて、苦痛に決まっている。煮えたぎった苦渋を飲む思いを、毎月の振り込み時に百々家は覚えるかもしれない。


