話をふられた貞夫は押し黙るしかなかった。
あまりにも正論すぎて、肯定しそうな唇を結ぶほどに。
肯定なんぞすれば、義父の怒りがこちらまで向くと貞夫は悟り、現に、義父の憤りの火は喜美子だけに向けられた。
「ば、馬鹿を言って!おまっ、おまえはそんなっだからっ!」
「あまり怒らない方がいいですよ、その歳で」
「黙れっ、で、出てけ、二度とっくるっな!この人でなしっがっ!」
明子と似たような怒り方は血筋の濃さをありありとしているようだった。
ツバを吐きながら、指差し、『消えろ!』と大きく振るってみせた実父に対しても、喜美子の笑顔は変わらなかった。


