器に浮かぶ月の水面を見たあとに、さざめきさんも一口。
「立派な子だ、渉くんは」
「そうだ、立派に成長した」
「真面目に素直に、いつの間にやら、たくましくもなった」
「その上、優しいだなんて、自慢したくなる私の家族だな」
「あ、あの、ちょっと……!」
いくらなんでも持ち上げすぎだと顔が赤くなってきた。両隣にいる二人は笑うあたり、もしかしたらからかっているのか。
後ろの人は「けっ」と面白くなさそうにしているのに、口は出してこなかった。
いつもなら、僕の悪いところをどんどんと罵るのに、何でだろう。聞くにも聞けず、五十鈴さんが甘酒を持ってお酌をしてくれるらしいのでグラスを差し出す。


