あれは中指が俺に楯突いたからと、くどくど説明――というか、助けた言い訳をする藤馬さんに「はいはい」と言いながら、お酌をする。


いつから本調子とやらになるのか分からないけど――一年先だろうが、十年先だろうが、あなたがそう言ってここに来てくれるなら、どうぞ呪いでもかけてください。藤馬さんはきっとまた、助けてくれるでしょうからね。


と言ったら、叩かれると思うので心内だけの秘密だ。


内心のにやつきを表に出さないように堪えていれば、ばさばさと紙の束がなびくような音がした。


見れば、月を横切る影。滑空しつつ、こちらに近づいてくるようであって。


「うわぁ」


相変わらず、男前な五十鈴さんだなぁと少しばかり失礼なことを思ったのは、綺麗に着地をした彼女を見たからだ。