僕だって、酷いことをされていたから――
詰まるところ、そこなんだ。
僕が今まで認めていなかった、苦痛。
当たり前、日常だと受け止めた悲惨を不幸とやっと認められたのは、今の幸せがあまりにも“当たり前になっていたから”。
何てことはない日常、されど、伯母さんが抜けたことで出来てしまう安息。
思い返した。
虐げられてきた日々と真逆の今に、僕が怯えていたものの正体を。
入ってはいけない部屋に入った時と同じ気分。
“呆気ない。勝手に怯えて、勝手に罪を作ろうとしたのは僕だった”――
罪滅ぼしをと不幸を求めていた時ならばそれが絶対となろうにも、五十鈴さんに教えられたんだ。


