藤馬さんの視線が、参道先の階段に行くようだった。
ここから下は見えないけど、時間的に伯母さんがまた階段でかごめかごめを歌っているんじゃないかと思う。
つい、伯母さんも戻せないですか、と聞きそうになったけど――出来たとしても藤馬さんがやってくれるわけないかと呑み込む。
いや、それ以前に、“戻ったことでどうなる”と言うんだか。
藤馬さんの右目が戻ってきてくれるのは安心した、けれども、僕のために藤馬さんが右目を失った事実は変わらないだろう。
終わったことの巻き戻しを求め、全てを零に戻せるだなんて虫が良すぎる。
伯母さんがこのままでいいとは言いたくない、だけど引き返してまた謝り続けようとは思えなかった。


