部屋に入った瞬間に、何か恐ろしい目に合うんじゃないかと、馬鹿な想像をしていただけ。


広がる雑然とした部屋を見て――戒めとしていた域に踏み入れたところで、僕は自身を罰しようなどとは思わなかった。


何も、ない。
だったら、罪も罰も成立しない。


他人の部屋に入るだなんてモラルに反するが、もうここに伯母さんは帰ってこない。住人が引っ越したあとの部屋に新しい誰かが入ろうとも、誰が怒れようか。


家の管理者として、やるべき勤めを果たしたあとに見つけたのがこのお酒だった。


お酒が腐るだなんて聞いたことはないけど、このまま肥やしにするのも勿体無いこと。


伯母さん、いただきます。と言って取ってきたあたりはまだまだ僕は伯母さんが頭から拭えないものの、こうして藤馬さんと月見をできるあたり、かなりの進展のような気がした。