おかしな話だ、伯母さんだって普通の人間なのに、“何をここまで怯えていたんだろう”と肩透かしな気分にもなったんだ。
入っては駄目と、忠告者がいなくなった時でさえも働いていた一線を踏み越えてしまえば、“何もなかった”。
入った瞬間に呪われるでも、伯母さんが怒り心頭でやってくるわけもない。
無人の部屋に入っただけでは何も起こらないのに、どうして今まで僕は、こんなにも引きずっていたのだろうかと、笑えてもきたものだ。
一番に怖いのは、自身の頭なわけで。ありもしない恐怖を想定してしまう。
藤馬さんの想定呪術じゃあるまいし、実際に体感できるわけでもないのに――“やらなければ、怖いまま”だ。


