「伯母さんの部屋、かなり雑然としていましたね」


ついぞ、足を踏み入れることができなかった禁忌。――だなんて、勝手に僕が思っていたことだった。


さざめきさんの診療所にしばらく泊まっていたから、帰るなりに掃除をした。やり始めたら結構な凝り性の僕は家中くまなく、年始年末の大掃除ほどに家の奉仕活動をしていたけど、そんな中で伯母さんの部屋の前に立ち寄った。


何を思ったわけでもない。なんとなく、ついで。伯母さんの部屋はどうしようかと、いない主人の代わりに掃除でもしようかと思ってのことだったか。


長年、触れてはいけぬと戒めた部屋は――入ってみれば、呆気なかった。


八畳間の和室には不釣り合いなベッドが置かれ、タンスやら棚やら、かけっぱなしで埃を被った高いコートがいくつか。天然石を詰めていたであろうコレクションケースが部屋のあちこちにあったのが少々変わった部屋となろうが――後は普通だった。