ここに連れてこられたのならば、早速掃除なのだろうかと、僕と目線を合わせたさざめきさんを見る。
色つき眼鏡の向こうからは彼の心情は掴めない。だから、いきなり抱きしめられて驚いた。
ぎゅっと、頭をくしゃくしゃに撫でられながら。
「君は、強いから」
それが、何を意味するかだなんて――
「こうでも、しなければね」
優しさが言葉と温もりになって体に伝わってくる。
「弱くなれない――吐き出せないだろうから」
離れた後もさざめきさんは、僕の頭を撫で続けた。
口元は笑ってはいるも、眼鏡の奥は泣いているように見えて――
「誰もいない100%。――内訳、ここに君の知るものはいない50%。君を知っているものもいない50%」


