中指斬残、捌断ち儀



夢の中から現実に来たような、反転でもしてしまったかのような不可思議なことにまばたきを何度かする。


しかして変わらない。裏路地に招かれたはずが、いつの間にかベッドのある一室だなんて、軽く心臓に悪い気がした。


薬品の匂いと心地よい温度。僕がついこの前までいた診療所だ。


さざめきさんの移動術は知っていたけど、まさか瞬間移動なるものを体験できるとは思わなかった。


実際には、これで二度目。前は、中指の一件で、意識が散漫にもなっていたせいか自身が人類の夢を体験した感慨に浸れず、ただ呆然としていたが……ダメだ、素面で体感しても、あっという間すぎて、やはり呆然でしかない。


呆けていれば、さざめきさんが僕をベッドに座らせた。