中指斬残、捌断ち儀



百々の家から離れられるだけで幸せだと貞夫は思ったが、口には出さなかった。


「あんな女の中の女たる、自己中心的な、『男は女を守るのが当然』『今の時代は女尊男卑』『妻がお金を払うだなんてあり得ない』とか脳内自分勝手な、女を武器に男を見下す妹なんかと結婚してしまった――ええ、不幸なあなたに、あたしはこれ以上、ムチ打つつもりはないんですよ」


「だったら……、せめて養育費の増額は……」


「何もあなたから増額分、七万円を請求するつもりなんか、あたしにはないのよ」


やだわぁと手招くような動作をしておちゃらけた喜美子は、義父に目をやった。


「百々の戒めたる呪い子をあたしに『タダで預かってもらおう』だなんて、勘当した娘にはあんまりにも図々しくなくて?ねえ、お父さん」