「こんな気持ちになるなら、会わない方が良かったのかもしれません。はは、ほんと、何したかったんだか、僕は」
どうか笑い話にしてくださいと、失敗談を語ったつもりでもいたが、さざめきさんが僕の頭に手を置いた。
ぽんぽんと二回叩いたあとに。
「強いな、渉くんは」
あまりピンとこないことを言われてしまう。
強いだなんて、こんな情けない話しかしていない僕に不釣り合いなのに。
「君は強い。みんなに自慢したくなるほどに」
尚も言われた。
「あの……」
「もう強くならなくていいから幸せになるんだ。まあ、そこは僕や五十鈴さんが保証してあげるけど……そうだな、大学には行った方がいい。学べる幸せが分からない君ではないだろう?」


