「あの、今回は付き合ってもらってありがとうございました」
舗装された歩道を隣り合わせで歩きながら、また改めて謝意を口にする。
「こんなこと頼めるの――適任者と言えば、さざめきさんしか思いつかなくて、良かったです、さざめきさんがいてくれて」
おかげで、“あの人”ときちんと話すことができた。
話したい用件は決まっていたけど、やはりは長い空白分、今更あの人に出会って自分が平静でいられるか分からなかった。
激情などするつもりはないけど、緊張やらできちんと話せないのは目に浮かぶ。だからこそ、安心役として付添人を頼んだ。
藤馬さんは言わずもがな適さないし、五十鈴さんだって、もしかしたら僕以上に取り乱してしまうかもしれない。
冷静沈着の見本たる人が隣にいてくれて、鏡でも見るかのように落ち着けたわけだけど。


