「いえ……、夫婦共有の財産から」
「へえ、それでもあの子――ワガママな妹のことだから、ろくすっぽ入れてないんじゃないのぅ?というか、大概の家庭ではやっぱり稼ぎ頭になるのは夫側でしょうし、夫婦共有財産だなんて名ばかりですよね。
離婚するらしいけど、残りの財産はどうするのかしら?」
「……。そこはきちんと……、共有の貯金はあなたに百万払ったあと、残りは僕に戻って、あとは特に……。家具とかは僕にとってあまり必要がないものなので、百々の家に置いていきます」
話し終えたあたりで義父が咳払いをしてきた。
そんなこと話すんじゃないと、貞夫の恥さらしを一喝したようであった。
「大変ですねぇ。あんな妹と結婚したばかりに。昔から妹は、“あたしの出来損ない”みたいなものでしたからね。ワガママで単純。自分の思い通りにならなきゃ気が済まなくて、イラつくとすぐに手が出る。
自分が正しいと思ったら聞く耳持たずで、自分が悪いと気付いたところで、今更引き返せないと意地でも我を突き通すような、そんな――」


