礼儀がなっていない奴に敬語使ったことを後悔しつつも、出かねた手帳を開いた貞夫だったが。
「今日、あなたを呼んだのは、話したいことがあったんです」
改まった口調の渉がそれを止めた。
そう言えばそうだと、養育費の話はこちらの都合であり、渉の用件は聞けず終い。音信不通だった歳月に一石を投じる話とは何なのかと、貞夫は身構える気持ちとなる。
「話って?」
「僕の呪い、解けたんです」
「…………、え」
一瞬、意味が分からなかったが――そう言えば、そんな話で百々から縁切ったのかと“思い出す”。
「それが、どうしたんだ……」
「……。いえ、“それが聞きたかっただけです”」
疑問符を浮かべる貞夫こそが、“用件であった”と言わんばかりに渉が立ち上がる。


