妻子(おまえたち)は悪くないのに、嫌な思いをさせてしまっては不憫だ――
腹を括る思いでもあった。今の妻子を守りたい勇ましい気持ちさえも芽生えさせた貞夫であったが――そこに対して、付添人の男は憤慨する目を向けていたのは、誰も知ることはない。
「元気なら良かった。持田さんの迷惑にならないよう、きちんとやっていくんだぞ」
その台詞で付添人が拳を握ったことも机下では誰も気づかなかった。
「そういえば、明子には連絡しなかったのか」
父親に会いたいならば母親にも、とありそうな考えを貞夫が出したところでアイスコーヒーが運ばれた。
「持田さんに言伝てを頼んだんですが、忙しいみたいで」
無理でした、と渉がミルクもガムシロップも入れないままアイスコーヒーを飲んだ。


