「え、あ……」
いつの間にかいた子供に対して、貞夫は体が震える思いとなる。
見ていた手帳をしまい、まだ席横に立つその子に思わずこちらも立ち上がろうとしたが。
「渉、か……?」
まず最初に、本心を口走ってしまった。
子は何年経っても子供だと親は言うが、12年の月日の長さを思い知らされる。
肩車していたあの小さな子が、こんなにしっかりとした足取りで自分から挨拶するだなんて。
思えば、渉は昔から『いい子』だった。大人に迷惑をかけない、手のかからない子。そのいい子がそのまま成長すれば、こんな純朴そうな少年になるのも楽に想像できるが、ああ――
「大きく、なったな」
何も思わなかった心が感慨に耽る。


