黙る貞夫に更なる追い込みをかけるよう、喜美子の口が開いた。
「子供を――一人息子が百万で『どうにかなる』だなんて思うには、ずいぶんと安すぎないかしら?逆に言えば、あなたは百万円を渡されたら、渉くんを手放せるの?」
「……」
「できないでしょうね。因みにこれはほめているんですよ。呪われた子を野放しにせず、きちんと誰かに預けようとして百万を用意するだなんて、立派な親の鏡だわぁ。
あたしだったら、『持っているだけで損にしかならない子』だなんて、埋めるわね」
「っ……」
「ああ、勘違いしないでくださいね。確かに渉くんは『損にしかならない子』ですが、それはあくまでも『あなたたちの手元にあるから』であって、あたしの手に渡れば、みんな幸せにしてあげられますから。もちろん、それは渉くんとて同じです」


