いくら命が助かり、もう怖いものはないと分かっていても、“事後に取り返しはつかない”。
恐怖で塗り固められた地に落とされ、首と中指を吊られ、中指を吐き出したとなれば、忘れられない記憶となっていよう。
「PTSDだなんて、最近はよく聞くと思うけどな。精神面のケアは僕じゃなくて、そちらの専門家に任せるべきだが……事の次第を正直に話せば、統合失調など判断されかねない」
全ては、妄想だと普通の人ならば思ってしまう。首の痕のこともあれば、“自傷するほどに症状が重い”と檻つきの病院行きになってもおかしくはない。
「だからこそ、しばらく渉くんはここで預かることにしたが――」
「くだらねぇ」
何の話かと思えばそんなこと、と話の種たる少年を軽蔑するかのように藤馬は言った。


