中指斬残、捌断ち儀



「謝礼金、とは体の良い言い方ですよねぇ。あえて酷く言えば、“売った”かしら」


「う、売ったって……!」


「ええ、渉くんを売ったのよ、あなたたちは。百万円であたしに引き渡したんじゃない。

――あらやだ、“売った”って言うのもこれでは変ですね。いけないわぁ、なんて言えばいいのかしら、こんな『百万あげるから子供を買ってください』みたいなことに例えなんて思い付かないわねぇ」


にへらぁ、とした淀みきった石油らしい笑顔に吐き気を覚えつつも、聞き捨てならないことだと貞夫は反論しようとしたが――言葉が思い付かなかった。


つい『言っていいことと悪いことがある』と喉まで出かけたが、それを言った瞬間に、喜美子の言い分を肯定してしまうと呑み込んだ。