そう言われて従うわけがないさざめきは、藤馬の左側に――捨てられた管つきの注射針を手にとった。
まったくと言いつつも、患者が拒否するならば無理強いはしない医者は点滴パックを片付けた。
ステンレス性のトレーに置き、薬品が入った棚の前に立つ。
「藤馬。一つ、聞いていいか」
施錠されていたらしく、白衣のポケットから小さな鍵を取り出しながらさざめきは言う。
藤馬の言葉など、「答えねえよ」とさざめきを相手する意思はないと表示したわけだが。
「五十鈴さんとお前が出会ってから、もう何年が経つ?」
「……」
また突拍子もない話題を出されたものだと、けれど確かにあれから何年かと聞かれれば答が曖昧な分、答えを出したくなった。


