中指斬残、捌断ち儀



頬に柔らかな感触を覚えた。


僅かに湿っていたためか、耳に「ちゅっ」とした音が通る。疑問符を浮かべて頬に触れる。いきなりの一瞬で自分が何をされたか分からなかったが。


「ぁ、の……、さ、さざめきが、こ、こうすれば、いいって」


顔を真っ赤にし、プルプル震える五十鈴を見て、事の成り行きを把握した。


「ぉ、お前のことは嫌いで、今でも許せないが、た、助かったのは事実だからな」


喋り途中だというのに、今にも逃げ出すような姿勢の五十鈴。穴があったら入りたい心境なのかもしれない。


「ぁ、ありっ……がっ……」


肝心な部分で噛んだのでわざとらしく咳払いをし。


「ぁ、ありがと、ぅ……」


きちんと言葉にできなくとも本人にしてみればいっぱいいっぱいなのか、不自然な歩き方で足早に部屋から出ていった。


途中、転んだらしく、廊下から盛大な音が聞こえた愛嬌つき、しばらく呆然としていた藤馬だったが、タオルが目から落ちて我に返った。