もっとも、共有財産と言いながら、八割方は貞夫が入れたお金になるが、共有財産から百万を切り崩したあと、残りの金額は貞夫に渡すという妥当な話し合いは持たれていた。
百万でほとんど貯金を切り崩したわけだが、それでも不満があるそうで喜美子は納得などしてくれなかった。
「百万円はあたしへの謝礼金ですよねぇ。どうしてそこから渉くんに割かなくてはならないの?」
「それは……」
「ああ、意地悪で言っているつもりはないのよ。お気を悪くなさらないでほしいのだけど、あまりにもあなた方の援助というのが甘すぎるものでこっちが気を悪くしちゃいそうなの」
うふふ、と手を顎に当てて微笑む喜美子。


