「月々八万とそちらは提示しましたが、あまりにも少なすぎるのではありませんか」
思った通りの回答に貞夫はしかめっ面をしたが、すぐに直した。
「お言葉ですが……、月々八万で十分すぎるぐらいだと思いますよ」
「そうでしょうか。渉くんを立派な子に育てるためには、やはりお金がつきものだと思うのよ。良いものを食べさせ、良い教材を与え、良い教養を学ばせるためにも、月々八万じゃ何もできないんじゃないのかしら」
「僕の手取りでそれ以上となると、なかなか厳しいものでして……。何か習い事をさせるなら、あなたに、その……謝礼金として出した、百万の中から出してはもらえないでしょうか」
謝礼金としての養育費とは別途の百万円は、夫婦の共有財産――渉のために貯めた貯金から切り崩したものだった。


