「やめてください、山村さん」
私がそう告げると、山村はゆっくりと顔を上げた。
「僕、自分の価値観を押し付けてましたよね。キツい言い方をしてしまって、本当にすみませんでした」
彼が本当に反省しているような顔をしているから、私の方こそ申し訳ない気持ちになる。
そんな自分に愕然とした。
私は彼に対して「あんたなんか謝って当然よ」と思っているはずなのに、頭を下げられても動揺するばかりで全然清々しない。
「私の方こそ、あの日は取り乱してすみませんでした」
私も軽く頭を下げる。
私だって一応、反省はしているのだ。
「いえ、僕のせいですから」
小学校の頃がどうであれ、今の山村はきっと、普通にいい人なのだと思う。
「お詫びと言ってはなんですけど、弊社について有益な情報を教えてあげます」
「有益な情報?」
私の言葉に、山村は意外そうな顔をした。
「はい。うちの営業所、所長は古田ですけど、実質仕切っているのは主任の新田なんです。ほら、今日いらしてるメーカーさんも、新田のご機嫌をうかがっている人が多いでしょう? うちで売り上げたいなら、新田に気に入られるといいですよ」



