10時少し前になると、週に5日、10時から5時までのパートタイム勤務をしている堀口さんがやってくる。
「おはよう真咲ちゃん。今日もいい天気ねぇ」
堀口さんはいつも元気でパワフルなおばさまだ。
母と同世代で、高校生のお子さんが二人いる。
「おはようございます、堀口さん」
「そういえば真咲ちゃん、今日誕生日だったわよね」
「覚えていてくださったんですか?」
「娘と近いから覚えてたのよ。これ、プレゼント。ちょっとしたものだけど」
彼女は数少ない、私を可愛がってくれる女性のうちの一人だ。
彼女がいてくれるから、ここでの仕事が楽しい。
「わぁ、ありがとうございます! おいしそうなクッキー、嬉しいです」
「お昼になったら、紅茶を淹れましょ」
「はい」
若い女性を目の敵にしたり小言をいう癖のある中年女性は苦手だけれど、彼女はとても気さくで、上品で、女として尊敬できる。
私は根がダークだから、彼女の明るさに救われていると思う。
幸先のいい誕生日。
きっとこの先も楽しい一日になる。
私は期待を胸に、いつもよりペースを上げて業務を進めた。



